「CHAOS;CHILD」TVアニメ連動サイドストーリー

カオスチャイルドな日々と人々
第4話 尾上世莉架と香月華と伊藤真二

世莉架「あれ? 真ちゃん、今日は元気ないね。どうかした?」

伊藤「…………」

世莉架「華ちゃん華ちゃん。真ちゃんがしょんぼりしてるんだけど、理由知ってる?」

香月「ん~ん」

世莉架「そっかぁ。真ちゃん、悩みがあるなら、私でよければ聞くよ~?」

伊藤「悩みなんかねえよ。っていうか、昨日のことがちょっとトラウマになってんだよ。あれ以来、なに食べても戻しちまう有様だ……」

世莉架「病院の地下でのこと? うんうん、そうだね、私も思い出すだけで膝が震えちゃうもん」

伊藤「いや、地下のことは別にいいんだよ。あんまよく覚えてねえし」

世莉架「えー? あんな怖い思いしたのに!?」

伊藤「したけど、それよりも、地下に行く前のことが強烈すぎて、そっちばっかり思い出しちまうんだ」

世莉架「う? 地下に行く前って、どこのこと?」

伊藤「決まってるだろ! 解剖室だよ!」

世莉架「ああ、あそこかぁ。警備員さんに見つかりそうになって、すごくドキドキしたよね」

伊藤「そのとき隠れた場所が問題だったんだよ。ほんと、あれはありえねえよ。マジで」

世莉架「えへへぇ。そうだねえ。真ちゃんの気持ちはよく分かるよ」

伊藤「は? 分かる? 分かるって言ったか、尾上!? ええ!? あえて言わせてもらうが、お前には絶対、俺の気持ちは分からねえし、分かってほしくもないね! お前はいいよなあ、お前と宮代が入った場所には他になにも“いなかった”しなあ」

香月「…………?」

世莉架「う? 私、責められてる? どうしてそんなにカリカリしてるの?」

伊藤「そりゃ、カリカリもするさ! マジであれは地獄だったんだからな!」

香月「ん~?」

伊藤「そう言えば、香月には状況説明してなかったな。よし、今から教えてやるよ。俺がいかにひどい目にあったかをな!」

香月「ん」

伊藤「いいか、俺と宮代と尾上は昨日の夜、AH東京総合病院に忍び込んだ。その後、地下でとんでもない発見をしたんだが、それは後で宮代か尾上にでも聞け。そっちの件は、宮代と久野里さんに任せたから」

世莉架「すごい発見だらけだったんだよ。公表なんかしたら、マスコミが殺到しちゃうぐらい!」

香月「ん……」

伊藤「どうせ俺は、肝心なときに部屋の外で見張をやらされてただけだし」

世莉架「あ、そう言えば、そうだったね……」

香月「んん」

伊藤「なんだ、香月、スルメイカくれるのか? ありがとよ」

香月「ん」

伊藤「なんか、憐れみの目で見られてるような気がするが……。まあいい、本題に戻るぞ。病院に忍び込んだ俺たちは、警備員に見つかりそうになったんだ。しかもその場所はよりによって、解剖室。隠れる場所は……解剖前の遺体を低温保存しておくための、冷蔵庫しかなかったんだ。後は分かるな?」

香月「ん……ん……!」

世莉架「あれ、最初はそういうものだって全然気付かなかったよ~。えへへぇ」

伊藤「笑い事じゃねえ!」

世莉架「ごめん……」

伊藤「解剖室の冷蔵庫ってのは、1人分の遺体を、仰向けに寝そべる形で保存できる台が、ロッカーみたいにいくつも並んでるんだ。結局、宮代と尾上がそのうちのひとつにふたり一緒に隠れて、俺は 別の台にひとりで隠れた」

世莉架「私とタクが入った場所は、ちょうど運良く誰も使ってなかったんだ。だからスペース的に、なんとか二人一緒に入れたんだけど」

伊藤「でも俺が隠れた台は違った。“先約”があったんだ」

香月「んぅ……」

伊藤「その“先約”と一緒に、俺は5分近くも密着して過ごすハメになったんだぞ! 俺はイヤだって言ったのに、宮代が無理矢理俺をそこに押し込んだんだ! こんなひどいことがあるか!」

香月「んん……」

伊藤「別に、死者を冒涜するつもりはねえんだ。でもよぉ、さすがにあれは、キツすぎだろ……。くそっ、今でもあの体の冷たさが、手に感触として残ってやがる。それに、匂いもすごかった……」

世莉架「ええと、真ちゃんには悪かったと思うけど、他にどうしようもなかったじゃん?」

伊藤「いいや、どうしようもなくねえよ。選択肢はいくらでもあった」

世莉架「えー? そうかなぁ? 他にいい組み合わせなんてあった?」

伊藤「あったね! 間違いない!」

世莉架「じゃあ、ひとつひとつ、検証してみる? んーと、組み合わせとしてできるのは……」

香月「ん。ん」

世莉架「うん。まずは、私と真ちゃんがふたりで隠れて、タクがひとりで隠れるパターンだね」

伊藤「おう。それでも別に問題なかっただろ。むしろ、宮代は部長なんだから、そういうとき部員のために犠牲になるべきだった」

世莉架「でも、私がイヤだなあ」

伊藤「は?」

世莉架「あの狭いところに、密着して入らないといけないんだよ? タクなら幼なじみで小さい頃から知ってるから、ちょっとぐらい平気だけど。さすがに、真ちゃんと密着するのはイヤだなあ」

伊藤「ちょっ、おま……イヤ……って。さらっと男のプライド打ち砕くの、やめてくんない?」

世莉架「あ、深い意味はないよ? 真ちゃんだけじゃなくて、誰だって無理って話。タクなら、ギリギリ許せるぐらいってことで」

伊藤「……ああ、そうかよ……。だったら尾上、お前がひとりで隠れればよかったんだ!」

世莉架「ええー! 私、あのときすごく怖がってたの、見てたよね? そんな私に押し付けようとするなんて、真ちゃんひどいよー!」

伊藤「うるせえ! 甘えるな! お前が怖かったのと同じぐらい、俺だって、こ、怖かったんだ!」

香月「…………」

世莉架「そもそも、その組み合わせだと、タクと真ちゃんが密着して隠れることになるけど。それでもよかったの?」

伊藤「……は?」

世莉架「あの冷蔵庫、かなり狭かったけど。男子が二人で入ったら、ほとんど身動き取れないんじゃないかなあ。つまり、タクと真ちゃんは、むぎゅーっとお互いの体を抱きしめ合うことになるわけで」

伊藤「…………」

香月「…………」

伊藤「…………」

香月「…………」

伊藤「おい、香月。なんで、ちょっとニヤけてるんだ……?」

香月「ん? んんん???」

伊藤「変な想像してんじゃねえ! こ、この話は、もう終わりだ! 俺が悪かった! もう文句も言わない! だからお前らも二度と考えるな! 頼む! お願いします!」

香月「ん」

世莉架「おっけい。一件落着だね♪」

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