「CHAOS;CHILD」TVアニメ連動サイドストーリー

カオスチャイルドな日々と人々
第12話 川原雅司と和久井修一

川原「……宮代はバカだ」

川原「なんで、あんなことしたんだ。なんで、全部ひとりで背負い込んだりしたんだ。なんで、身近にいた人に相談しようとしなかったんだ。自分は孤独だったとでも言うつもりか? 誰にも分かってもらえなかったとでも言うつもりなのか?」

川原「ふざけるな! 来栖は、義理の姉として誰よりも宮代のことを気に掛けていたんだぞ! まさかそれにすら気付いていなかったっていうのか!? だから、来栖が悲しむと分かっていて、あんなとんでもない事件を起こしたのか!?」

川原「謝れよ……、来栖に、謝れ……。クソッ」

和久井「川原くんの気持ちは分からなくもないよ。なにもできなかった自分への情けなさ、みたいなものだろう? 怒りと虚しさがない交ぜになって、その感情を自分の中で持て余してしまう」

川原「……かも、しれません」

和久井「僕だって新聞部の顧問として、宮代くんには、あんな事件を起こす前に一言でいいから、相談してほしかったって思ってるよ。相談してもらえなかったことが、つまりは彼から僕への教師としての評価、ということになるのかもしれないね」

和久井「要するに、僕の力不足だったということさ。顧問でありながら、宮代くんの苦悩に気付いてあげられなかったんだから」

川原「先生……。あいつは……英雄にでもなりなかったんでしょうか? そのために、自作自演をした、と?」

和久井「どうだろうね。僕らは真実をなにも知らない。ただニュースで見た情報だけで判断している部外者だ。宮代くんがなにを考えて行動していたのか、それをこの場で僕らがあれこれ推測したところで、きっとどれも見当外れのものばかりだろう」

川原「真実は、明らかにされると思いますか?」

和久井「おそらくそれは無理なんじゃないかな。真実というものの定義でさえ曖昧なまま、人はこれまでやって来たんだ。立場が変われば真実も変わる。それは歴史が証明している」

川原「そんなの……詭弁です」

和久井「世界の構造は……残念ながら、そういう風になっている、ということさ。悲しいが、それが現実だよ。……フッ」

川原「先生? どうして今、笑ったんですか? 新聞部の部員たちが、今回の事件の当事者だったっていうのに」

和久井「おや、今、僕は笑ったかい? そんなつもりはなかったんだけどね」

川原「…………」

和久井「それより川原くん。つい、想像してしまうことはないかい? あのときああしていれば、こうはならなかったはずなんだ、と」

川原「そんなの……数え切れないぐらいありますよ。俺がもっとうまく立ち回れば、来栖だってあんな目に遭わずに済んだんだ……。伊藤だって、来栖の妹さんだって、宮代自身だって……」

和久井「ちょっと想像してみよう。こんな殺伐とした、宮代くん曰く“くそったれ”な世界じゃなく、もっと平和で、“らぶ”と、“Chu☆Chu”に溢れた別の可能性について、ね」

川原「“らぶ”と、“Chu☆Chu”!?」

和久井「そう。“らぶ”と、“Chu☆Chu”さ」

 

――――――――――――

 

川原「2015年10月。碧朋学園新聞部は、世間をあっと言わせるスクープをモノにすべく活動に勤しんでいた。ただ、そうは言いつつ部員達は雑誌を読んだりネトゲをしたりと、まるでやる気がない」

和久井「うんうん。あ、新聞部の顧問は変わらず僕ね」

川原「そんな活動状況から、新聞部は生徒会から部費の削減をほのめかされる。この危機を脱するためにもネタ探しに没頭する中で、新聞部は最近渋谷で起きている“ニュージェネレーションの狂気の再来”と呼ばれる事件に目をつけた」

和久井「うんうん」

川原「だけど、どの事件もくだらない内容ばかりだったんだ。こんな事件を追っても時間の無駄さ」

和久井「うーん。そうかぁ」

川原「一方で、部活動以外の時間では、女子部員の水着の試着に付き合ったり、女子部員同士のじゃれあいを眺めたり、ラッキーハプニングが起きたり」

和久井「青春だねえ」

川原「そうだ、俺は、本当は、こんなリア充ライフを望んでいたんだ!! それがついに今日、実現するんだ!! そう、それこそが『らぶChu☆Chu!!』」

和久井「くそったれな世界はリタイアすればいいということだね。あ、ただしね、川原くん。そんならぶChu☆Chuライフを満喫するのは、残念ながら君じゃないから。だって君、新聞部じゃないでしょう?」

川原「宮代ぉぉぉぉぉぉ!!!」

和久井「『CHAOS;CHILD らぶChu☆Chu!!』は、今日発売だよ」

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