「CHAOS;CHILD」TVアニメ連動サイドストーリー

カオスチャイルドな日々と人々
第11話 神成岳志と百瀬克子

神成「もしもし、神成です」

百瀬「あら。電話してきたっていうことは、無事に宮代くんをヒカリヲに送り届けたのね?」

神成「ええ。かなりの人混みでハラハラしましたが、特に周囲に気付かれる様子もなく中へ」

百瀬「そう……」

神成「結局、俺は見送ることしかできませんでした……。宮代くんにすべてを託すしかできないなんて、これじゃ大人として失格です」

百瀬「……6年前、私も、似たようなことを思ったものだわ」

神成「6年前? というと――」

百瀬「ええ。渋谷地震が起きた翌日。私は、たったひとりで渋谷の中心へと向かう西條拓巳くんの背中を見送ったの」

神成「なんですって……? まさか、百瀬さんが西條拓巳と接触していたなんて……」

百瀬「私は当事者なんかじゃなかった。たまたまそこにいたってだけ。だから、あの子を引き留めることもできなかった。できたのは、ただ、見送ることだけ」

神成「これもまた、6年前の再現ということになるんですかね……」

百瀬「だとしたら皮肉なものね」

神成「…………」

百瀬「でも私が知る限り、あのときと違うことが、少なくともひとつあるわ」

神成「なんです?」

百瀬「神成ちゃん、あなたよ」

神成「俺、ですか?」

百瀬「あなたはちゃんと私の忠告を守った。だから、今こうして私と電話で話ができている」

神成「忠告……」

百瀬「あなたの先輩は、6年前、たったひとりで闇の奥深くへ足を突っ込んじゃって、戻ってこなかったから。刑事って、ドラマでもそうだけど、目の前にある使命を優先しすぎて、自分の命を軽く見ちゃうところがあるでしょう? 正直、神成ちゃんのことも、ちょっと危なっかしいとは思っていたのよ」

神成「俺は先輩と違って、気の小さい男ですよ」

百瀬「ふふ。そういうことにしておくわ」

神成「俺が今回の事件の真相にここまで迫れたのは、百瀬さんや久野里さんの協力のおかげです。ひとりで動いていたらどうなっていたか……。いや、どうもなっていなかったかもしれませんけどね。どうすることもできないまま、なにも分からないまま、取り残されていただけかもしれない」

百瀬「神成ちゃん……」

神成「ただ、せっかくの二人の協力があっても、俺は傍観者にしかなり得ませんでした。宮代くんたちのような力を、俺は、持っていなかったわけですから」

百瀬「あなたも力が欲しかった?」

神成「そういうわけじゃありませんが。あまりに法や常識じゃ計れないことばかりが続いて……、結局、俺も警察も、そんな超常的な事態を前にして、ひたすら無力だったということです。言わば、警察力の敗北ですよ」

百瀬「相変わらず真面目だわね。もっとちゃらんぽらんでいなさいって言ったのに」

神成「すみません……」

百瀬「それに神成ちゃん。しょげてるヒマなんてないのよ」

神成「え?」

百瀬「神成ちゃんには、まだまだやってもらうことがあるんだから。そんなんじゃ、たったひとりで渋谷に乗り込んで行った宮代くんに示しが付かないじゃない。シャンとなさいな」

神成「は、はあ。やっぱり百瀬さんにはかなわないな……」

百瀬「いい? 宮代くんにすべての尻ぬぐいをさせてはダメ。そのために私たちができることは、いくらでもあるわ」

神成「できること、か……」

百瀬「今は送り出すことしかできなくても、戻ってきた宮代くんを出迎えて、支えていくことはできる。そうでしょう?」

神成「それこそが、我々大人の役目、ということでしょうか」

百瀬「大人のめんどくさいしがらみから彼を守ってあげられるのも、大人しかいないのよ」

神成「そうですね」

百瀬「分かったから合流しましょう。こっちは澪ちゃんたちも一緒よ」

神成「まだ渋谷から脱出していないんですか?」

百瀬「ええ。状況次第じゃ、取って返すことになるかもしれないから」

神成「分かりました。これからそっちに向かいます」

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